鼠径部しこりで疑うべき疾患

鼠径部(足の付け根)に膨らみあるいはしこりができる病気は鼠径ヘルニアだけではありません。
鼠径部にしこりが出来たり痛みが生じたときに考えられる病気についてご紹介します。

鼠径部とは

鼠径部(そけいぶ)とは太ももの付け根の辺りを指します。
具体的には左右の足の付け根の溝より内側~恥骨の外側の場所です。

鼠径部は胴体と脚の連結部分であり、解剖的に少し複雑な場所となります。

※イラストで青い点線で囲んでいる場所が鼠径部になります。

鼠径部(足の付け根)にしこりが出来る病気

1.鼠径ヘルニア
鼠径部には筋肉の隙間から内臓(腸や膀胱)が皮膚の下まで出てしまう病気です。
鼠径部に膨らみやしこりを触れたら、第一に考えるべき病気です。

2.リンパ節腫大
しこりの形がはっきりしていて、押すと簡単に動き、また圧痛を伴うことがあればリンパ節である可能性が高いです。
足の付け根である鼠径部、腕の付け根である腋窩、はリンパ節が多く集まる場所です。

リンパ節にはリンパ液が流れ込みますが、細菌やがん細胞をせき止める役割をしています。
痛みを伴っていれば、感染症によるリンパ節炎の可能性が高く、無痛性ならがんの可能性も考えられます。

3.軟部腫瘍, 膿瘍
脂肪腫や皮下の粉瘤が鼠径部にできることもよくあります。
場合によっては切除した方が良いこともあります。

4.ヌック管水腫
若い女性に好発する病気です。水腫と呼ばれる水の袋ができた状態で、鼠径部の膨らみとして感じます。
子宮内膜症と関連することがあります。

鼠径部にしこりが出来た場合、まずは鼠径ヘルニアを疑いましょう

様々な鼠径ヘルニア

1.外鼠径ヘルニア
最も頻度の高い鼠径部ヘルニアです。精巣動静脈や子宮円索の通り道となる鼠径管の出口=「内鼠径輪」が開大し、そこから腹膜が逸脱して「ヘルニア嚢」となります。

そのヘルニア嚢の中に腹腔内の臓器が出ると、体表からはしこりとして触れます。生まれつきの方が多いのも外鼠径ヘルニアの特徴です。

内鼠径輪は開大しても限度があるため、ここから脱出した腸管は締め付けられやすく、「嵌頓」になりやすいタイプのヘルニアの一つです。

このタイプのヘルニアは腹直筋を栄養する下腹壁動静脈というしっかりした血管の外側から体外へ逸脱するため、外鼠径ヘルニアと呼ばれます。(「内鼠径輪」から逸脱するのに「外鼠径ヘルニア」なんです…)

2.内鼠径ヘルニア
鼠径管の出口から逸脱するのが外鼠径ヘルニアであるのに対し、弱くなった鼠径管の後壁と一緒に腹膜が突出してヘルニア嚢になり、そこから内臓が逸脱するのが内鼠径ヘルニアです。

下腹壁動静脈の内側から逸脱しているので内鼠径ヘルニアと呼ばれています。

中年以降の男性の方に多いのが特徴で、解剖学的に膀胱が近くにあるため膀胱が逸脱する割合が高いです。また、筋肉のゆるみが原因なので放置するほどヘルニアが徐々に大きくなり、手術の難易度も上がってしまいます。

3.大腿ヘルニア
女性に多いヘルニアで、特に出産回数の多い高齢の女性に多いのが特徴です。太ももの付け根の下側が膨らみますが、付け根の上に膨らむこともあります。

太ももから下の大腿と下腿を栄養するとても太い血管の大腿動静脈の通り道である大腿輪からヘルニア嚢が出ているタイプです。

大腿輪は狭いため、このタイプのヘルニアの頻度は少ないですが、大腿輪が狭い事が原因で最も嵌頓を起こしやすいヘルニアでもあります。なるべく早く手術をする事をお勧めします。

4.閉鎖孔ヘルニア
こちらも痩せた高齢女性に好発するヘルニアです。骨盤を構成する座骨と恥骨で形成される閉鎖孔という場所からヘルニア嚢が出ています。

閉鎖孔は閉鎖動脈や閉鎖神経が通っているため、閉鎖孔ヘルニアの方は閉鎖神経圧迫症状である大腿の内側の部分の痺れや痛みを訴える事が多いです。

閉鎖孔ヘルニアは体表に膨らみが現れず、また非常に嵌頓しやすいため、腸閉塞症状で見つかることが多いです。

当院へご相談ください

当院は広島駅直結の鼠径ヘルニア日帰り手術を専門としたクリニックです。
鼠径ヘルニアかどうか分からなくても構いません、鑑別すべき疾患含めて責任もって診察いたします。

土日祝日も診療しているので、電話やLINEでお気軽にご相談ください。