鼠径ヘルニアの症状で病院を受診することを考えていらっしゃる方、また、すでに手術が決まっている方へ向けて、初診時の流れや手術前の準備について詳しくご説明いたします。
少しでも患者さんの不安を和らげ、安心して治療に臨んでいただけるよう、具体的な情報をお伝えしていきます。
鼠径ヘルニアとは
鼠径ヘルニアは、腹腔内の臓器(主に腸管や大網)が腹壁の薄くなった部分から飛び出してしまう疾患です。
脱腸とも呼ばれ、足に力を入れた時やお腹に力が入る動作で膨らみが出現し、横になると自然に戻るという特徴があります。
放置すると症状が徐々に悪化し、日常生活に支障をきたすようになります。
また、嵌頓(かんとん)と呼ばれる重篤な状態を引き起こす可能性もあるため、診断がついた場合は手術による治療を推奨します。
現在は、メッシュと呼ばれる人工補強材料を用いた手術が標準治療として確立されております。
初診時の診察について
鼠径ヘルニアの診断は、主に問診と視診・触診によって行われます。
初診時には、いつから症状があるか、どのような時に症状が出現するか、日常生活にどの程度支障があるかなど、詳しくお聞きします。
診察では、立位と臥位での状態を確認させていただき、
ヘルニアの大きさや、還納(へルニアの内容物が腹腔内に戻ること)の可否などを評価します。
必要に応じて超音波検査を行うこともあります。
鼠径部を診察しやすい服装でお越しいただくとスムーズです。
また、手術の適応があるかどうかを判断するため、以下のような項目についても確認させていただきます:
・基礎疾患の有無(糖尿病、心疾患、高血圧症など)
・服用中のお薬(特に抗凝固薬・抗血小板薬)
・過去の手術歴
・職業や普段の生活スタイル
・アレルギーの有無
手術が必要と判断された場合の準備
手術適応と医師が判断しましたら、手術日程の調整を行います。
日帰り手術を基本としていますが、患者さんの状態や希望に応じて入院手術も可能です。
手術までの期間に必要な準備や注意点について説明を行います。
術前検査について
手術の安全性を確保するため、以下のような術前検査を行います:
・血液検査(血算、凝固機能、肝機能、腎機能など)
・心電図検査 ・胸部レントゲン検査
・必要に応じて呼吸機能検査
これらの検査は15分程度で済みます。
検査結果に応じて、追加の検査や専門医への診察依頼が必要となる場合もあります。
服薬に関する注意点
普段服用されているお薬について、手術前に中止や変更が必要となる場合があります。
特に、多種の降血糖薬を服用されている方は、主治医と相談の上、適切な休薬期間を設定する必要があります。
また、サプリメントや健康食品についても、手術前に中止を要することがあるため、サプリメントについてすべて知らせて頂きたいです。
生活面での準備
手術に向けて、以下のような生活面での準備が必要となります:
・喫煙されている方は、少なくとも手術1週間前からの禁煙が必要です。
喫煙は術後の傷の治りを遅らせ、合併症のリスクを高める可能性があるからです。
・手術当日は朝から絶食となる。
水分は2時間前まで摂取可能ですが、固形物は前日の夜21時以降は摂取できません。
・入浴は手術前日まで通常通り行えます。
当日は手術部位を清潔に保つため、シャワーを浴びることを推奨します。
・術後の回復をスムーズにするため、可能であれば術前から軽い運動や散歩を行い、体力の維持に努めることをお勧めします。
手術当日の持ち物
日帰り手術の場合、以下のものを準備していただきます:
・保険証
・診察券
・同意書(初診時にお渡しした者)
・常用薬(お薬手帳)
・着替えの下着(念のため)
術後の生活に向けた準備
手術後の回復をスムーズにするため、以下のような準備を推奨します:
・仕事や家事などの予定調整:術後3日程度は安静が必要です。
無理のない範囲でスケジュール調整を行いましょう。
・自宅環境の整備:必要な物を手の届きやすい位置に配置するなど、術後の生活がしやすいよう工夫しましょう。
心構えと注意点
手術に対する不安は誰もが感じるものです。
しかし、鼠径ヘルニアの手術は、現在では確立された安全性の高い手術であり、
最新の手術機器と技術を用いて、できる限り負担の少ない手術を実施しております。
術前に気になることや不安なことについては、医師や看護師に相談することが望ましいです。
患者さんの不安や疑問に対して丁寧な説明を行い、安心して手術に臨める環境を整えています。
手術に向けて大切なのは、リラックスした状態で臨むことです。
術前の準備をしっかりと行うことで、より安全で効果的な手術が可能となります。
まとめ
これらの準備を整えることで、より安心して手術に臨むことができます。
また、医療チームとのコミュニケーションを大切にし、分からないことがあればすぐに質問することも重要です。
手術に対する不安は自然なことですが、適切な準備と心構えができていれば、より落ち着いて手術に臨むことができるでしょう。
何か具体的な懸念や質問があれば、お気軽にお聞かせください。