鼠径ヘルニアになりやすい理由:果樹園のお仕事の方の場合

こんにちは、鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門とする広島アルプスクリニックです。
果樹園のお仕事は、その職業の性質上、鼠径ヘルニアのリスクが高いと言われています。この記事では、なぜ果樹園のお仕事の方が鼠径ヘルニアになりやすいのか、その理由を詳しく解説します。

鼠径ヘルニアとは

鼠径ヘルニアは、腹腔内の臓器(主に腸管)が腹壁の脆弱部分を通って鼠径部に脱出する状態を指します。
主な症状には、鼠径部の疼痛や違和感、立位や歩行時に顕著となる膨隆などがあります。
重量物の挙上や腹圧上昇を伴う動作により、発症リスクが高まることが知られています。

果樹園のお仕事の特徴と鼠径ヘルニアのリスク

果樹園のお仕事には、鼠径ヘルニアの発症リスクを高める以下のような特徴があります。

1.重量物の持ち上げと運搬
果樹園での作業は、以下のような重量物を扱う作業が含まれます。

  • 収穫した果実の入ったコンテナ(20-25kg程度)
  • 肥料や農薬の袋(20-30kg)
  • はしごや脚立(10-15kg)

これらの重量物を繰り返し持ち上げたり運んだりすることで、腹部に大きな圧力がかかり、鼠径部に負担がかかります。特に、果実の収穫期には一日中この作業を続けることもあり、鼠径ヘルニアのリスクが高まります。

2.作業をする際の姿勢
果樹園での作業は、一日中立ちっぱなしや歩き回ることが多く、以下のような影響があります。

  • 木に登っての剪定や収穫
  • しゃがんでの低い位置にある果実の収穫
  • 腕を伸ばしての高所作業

これらの姿勢は、腹部や鼠径部の筋肉に過度の負担をかけます。特に、長時間同じ姿勢を維持することで、筋肉が疲労し、ヘルニアのリスクが高まります。

3.長時間の立ち仕事
果樹園での作業は、一日中立ちっぱなしや歩き回ることが多く、以下のような影響があります。

  • 下半身への血液の滞留
  • 足首、膝、腰への負担
  • 全身の疲労蓄積

これらの要因が重なることで、鼠径部の筋肉や組織が弱くなり、ヘルニアのリスクが高まります。

4.動作について
果樹園での作業には、以下のような急な動作や体の捻りが含まれることがあります。

  • 落下しそうな果実をキャッチする動作
  • はしごや木から降りる動作
  • 重い荷物を持ちながらの方向転換

これらの動作は、瞬間的に腹部に大きな圧力をかけ、鼠径部に負担をかけることになります。

5.気候条件による影響
果樹園の作業は屋外で行われるため、気候条件の影響を受けやすく、以下のようなリスクがあります。

  • 暑い日の作業による脱水や疲労
  • 寒い日の作業による筋肉の硬直

これらの条件下で作業を続けることで、体全体の疲労が蓄積し、鼠径ヘルニアを含む様々な健康問題のリスクが高まります。

これらの特徴により、果樹園のお仕事は鼠径部に慢性的かつ急性的な負荷がかかりやすく、鼠径ヘルニアのリスクが一般的な職業と比較して高くなると考えられます。
そのため、適切な予防策と自己管理が極めて重要となります。

鼠径ヘルニアの予防と対策:4つの重要ポイント

1.適切な持ち上げ技術の習得と実践
  ●正しい姿勢:背筋を伸ばし、膝を曲げて腰を落とす
  ●荷物を体に近づけて持ち上げる
  ● 急な動きを避け、ゆっくりと持ち上げる
  ● 重い荷物は二人以上で協力して持ち上げる

2.定期的な休憩と水分補給
  ●1時間ごとに5-10分の休憩を取る
  ● 日陰や冷房のある休憩所の設置
  ●こまめな水分補給(1時間に200-300ml程度)

3.ストレッチや柔軟体操の実施
  ●作業開始前のウォーミングアップ
  ●休憩時の簡単なストレッチ
  ●作業終了後のクールダウン

4.定期的な健康チェック
  ●年1回以上の健康診断を受ける
  ●違和感や痛みがあれば早めに医療機関を受診する

まとめ

果樹園作業者の鼠径ヘルニアリスクを軽減するためには、上記の予防策と対策を総合的に実施することが重要です。
これらの対策は、単に鼠径ヘルニアの予防だけでなく、作業者全体の健康増進と作業効率の向上にもつながります。
改善のサイクルを確立することで、長期的に持続可能な、健康的な果樹園運営が可能となるでしょう。

当クリニックでは、腹腔鏡による日帰り手術をご提供しています。
ご不明な点やご心配なことがございましたら、どうぞお気軽に当クリニックまでお問い合わせください。

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