鼠径ヘルニア手術で起こりうる合併症

こんにちは、鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術を専門とする広島アルプスクリニックです。
鼠径ヘルニアの手術は一般的に安全性の高い手術ですが、すべての手術と同様に合併症のリスクが存在します。

この記事では、手術に関連する合併症について詳しく解説し、当クリニックでの対策についてもご説明いたします。

目次

鼠径ヘルニアとは

鼠径ヘルニアとは、腹腔内の臓器や脂肪組織が腹壁の脆弱部から飛び出してしまう疾患です。
日常生活に支障をきたすだけでなく、重症化すると腸閉塞や腸管壊死などの深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、適切な時期での手術治療が推奨されています。
現在では、メッシュという人工補強材料を用いた術式が標準治療として確立されており、多くの患者さんが手術による恩恵を受けています。

しかし、どんな手術にも合併症のリスクは存在します。
今回は、鼠径ヘルニア手術後に起こりうる代表的な合併症について詳しくご説明します。
これらの情報をご理解いただくことで、手術に対する不安が軽減され、また術後の異常に早期に気付くことができるようになります。

手術に関連する一般的な合併症

手術に関連する一般的な合併症として最も注意すべきなのは、感染、出血、血栓症です。

創部感染は0.5%程度の確率で発生する可能性があります。
これは他の消化器系手術よりも低い数字で、鼠径ヘルニアが腸管などを触らない清潔手術だからです。
症状としては発熱や手術部位の発赤、腫れ、痛み、膿の排出といった症状が現れます。
これに対しては抗生物質による治療を行い、必要に応じて創部の洗浄や再手術を検討します。

出血は1%未満と比較的まれですが、手術部位の腫れや皮下出血、痛みといった症状が出現した場合は、慎重な経過観察や場合によっては再手術が必要となることがあります。

血栓症は0.1%未満とさらにまれな合併症ですが、足の腫れや痛み、重症の場合は呼吸困難を引き起こす可能性があるため、発症時は抗凝固療法や集中治療による迅速な対応が必要となります。

鼠径ヘルニア特有の手術合併症

術後水腫・血腫について

手術後によく見られる合併症の一つが、術後水腫(しゅしゅ)や血腫(けっしゅ)です。
水腫とは、手術創の周囲に体液が貯留する状態を指します。
一方、血腫は手術部位に血液が溜まった状態です。

これらは手術操作による組織の損傷や、手術で形成された空間に体液が貯留することで発生します。
特に腹腔鏡手術では、手術時に腹腔内にガスを注入して空間を確保するため、このような合併症が起こりやすいとされています。

多くの場合、水腫や血腫は時間とともに自然に吸収されていきますが、大きな腫れや痛みを伴う場合は、穿刺による排液が必要となることもあります。
予防法としては、術後の過度な運動を控え、指示された圧迫下着をしっかりと着用することが重要です。

慢性疼痛について

鼠径ヘルニア手術後の慢性疼痛は、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を与える可能性がある合併症です。
手術から3ヶ月以上経過しても継続する痛みを慢性疼痛と定義しており、発生頻度は全体の5-10%程度と報告されています。

慢性疼痛の原因としては、手術による神経の損傷や、メッシュによる組織の炎症反応、瘢痕組織による神経の圧迫などが考えられています。
症状は個人差が大きく、軽度の違和感程度から日常生活に支障をきたすような強い痛みまで様々です。

予防のためには、手術時の丁寧な神経の同定と温存、適切なメッシュの選択と固定が重要です。
当院では、最新の低侵襲手術手技を用い、できる限り神経への影響を最小限に抑える工夫を行っています。
また、慢性疼痛が発生した場合は、投薬治療やブロック注射など、症状に応じた適切な治療を行っています。

メッシュ感染について

メッシュ感染は、発生頻度は低いものの(1%未満)、発生した場合は治療に難渋する可能性がある重要な合併症です。
メッシュは体内に永久的に留置される異物であるため、感染すると完治が困難となり、メッシュの除去が必要となることもあります。

感染の症状としては、手術創の発赤、腫脹、痛み、発熱などが見られます。
特に術後早期に起こる感染と、数ヶ月から数年後に起こる遅発性感染があることが知られています。

予防には、術中の清潔操作の徹底と適切な抗生物質の投与が重要です。
また、患者さんご自身による術後の創部の清潔保持も大切です。
感染の兆候が見られた場合は、早期発見・早期治療が重要となりますので、速やかに受診していただく必要があります。

まとめ

鼠径ヘルニア手術は一般的に安全な手術ですが、合併症のリスクは存在します。
当クリニックでは、これらのリスクを最小限に抑えるため、細心の注意を払って手術を行っています。
また、万が一合併症が発生した場合でも、迅速かつ適切に対応いたします。
手術に関する不安や疑問がございましたら、遠慮なくご相談ください。

当クリニックでは、腹腔鏡による日帰り手術をご提供しています。
電話やLINEで24時間相談を受け付けておりますので、ご不安な点や質問があれば、いつでも当院のスタッフにご相談ください。

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