こんにちは、鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門とする広島アルプスクリニックです。
引っ越し業は身体的に負荷の高い仕事として知られていますが、その中でも特に注意が必要な健康リスクの一つが鼠径ヘルニアです。
この記事では、引っ越し業務に従事されている方々が鼠径ヘルニアになりやすいのか、その理由と対処法について解説します。
鼠径ヘルニアとは
鼠径ヘルニアは、腹腔内の臓器(主に腸管)が腹壁の脆弱部分を通って鼠径部に脱出する状態を指します。
主な症状には、鼠径部の疼痛や違和感、立位や歩行時に顕著となる膨隆などがあります。
重量物の挙上や腹圧上昇を伴う動作により、発症リスクが高まることが知られています。
引っ越し業務の特徴と鼠径ヘルニアのリスク
引っ越し業務には、鼠径ヘルニアの発症リスクを高める以下のような特徴があります
1.重量物の頻繁な取り扱い
引っ越し作業では、重い家具、家電製品、段ボール箱などを頻繁に持ち上げ、運搬する必要があります。
これらの動作は腹腔内圧を急激に上昇させ、鼠径部に大きな負担をかけます。
特に、重量物を持ち上げる際に腹筋に力を入れすぎると、腹圧が極端に上昇し、鼠径管を通じて腸が押し出されるリスク が高まります。
2.不自然な姿勢での作業
狭い廊下や階段、エレベーターのない建物での作業など、引っ越し現場では不自然な姿勢を強いられることが多々あります。
例えば、重い家具を持ちながら体をねじったり、斜めに傾けたりする動作は、鼠径部に不均等な力をかけ、組織を弱める原因となります。
また、長時間にわたってこのような姿勢を維持することで、鼠径部の筋肉や靭帯に慢性的なストレスがかかり、ヘルニアのリスクが増大します。
3.長時間の立ち仕事
引っ越し作業は多くの場合、長時間の立ち仕事となります。
長時間立ち続けることで、下腹部や鼠径部の筋肉が疲労し、その支持力が低下します。
特に、腹筋や骨盤底筋群の疲労は、腹腔内臓器を適切に支える能力を減少させ、鼠径ヘルニアの発症リスクを高めます。
また、長時間の立位作業は血液循環にも影響を与え、鼠径部周辺の組織の弾力性を低下させる可能性があります。
4.繰り返しの動作
引っ越し作業中は、物を持ち上げる、運ぶ、降ろすという一連の動作を何度も繰り返します。
この反復的な動作により、鼠径部の特定の箇所に負担が集中しやすくなります。
特に、正しい姿勢や技術を用いずに同じ動作を繰り返すと、鼠径管周辺の組織が徐々に弱体化し、最終的にヘルニアを引き起こす可能性が高まります。
また、繰り返しの動作による慢性的な疲労は、身体の防御メカニズムを低下させ、鼠径ヘルニアの発症リスクを増大させます。
5.急な力の入れ方
引っ越し現場では、予期せぬ状況で急に力を入れる場面が多くあります。
例えば、重い家具を持ち上げる際にバランスを崩し、それを修正しようと急激に力を入れることがあります。
また、階段で足を踏み外しそうになった時や、重い荷物を落としそうになった時にも、瞬間的に強い力が加わります。
このような急激な力の入れ方は、腹腔内圧を突然かつ大幅に上昇させ、鼠径部に過度の負担をかけます。
特に、鼠径管がすでに弱っている場合、このような急な力の入れ方が鼠径ヘルニアの直接的な引き金となる可能性があります。
これらの特徴により、引っ越し業務従事者は鼠径部に慢性的かつ急性的な負荷がかかりやすく、鼠径ヘルニアのリスクが一般的な職業と比較して高くなると考えられます。
そのため、適切な予防策と自己管理が極めて重要となります。。
鼠径ヘルニアの予防と対策:5つの重要ポイント
1.正しい作業方法
●膝を曲げ、背筋を伸ばして荷物を持ち上げる
●無理をせず、必要に応じて協力を求める
●定期的に短い休憩を取り、筋肉の疲労を軽減する
2.体力強化
●腹筋や背筋など、コアマッスルを鍛える
●仕事の前後にストレッチを行い、筋肉をほぐす
●適度な有酸素運動で全身の血行を促進する
3.健康的な生活習慣
●バランスの取れた食事で適正体重を維持する
●禁煙を心がける(咳による腹圧上昇を防ぐ)
●十分な睡眠をとり、体の回復を促す
4.適切な装備の使用
●腰部サポーターで腹部と腰部の安定性を高める
●クッション性と安定性のある作業靴を選ぶ
5.定期的な健康チェック
●年1回以上の健康診断を受ける
●違和感や痛みがあれば早めに医療機関を受診する
まとめ
これらの予防策を日々の仕事や生活に取り入れることで、健康的に長く働き続けることができます。
自分の体を大切にし、鼠径ヘルニアの症状や違和感を感じたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。
早期発見・早期治療が、より良い回復につながります。
当クリニックでは、腹腔鏡による日帰り手術をご提供しています。
ご不明な点やご心配なことがございましたら、どうぞお気軽に当クリニックまでお問い合わせください。