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鼠径ヘルニアの手術を控えている方、また術後の経過観察中の方にとって、便秘の問題は大きな悩みの一つとなっています。
今回は、手術後の便秘について、その原因と対策をご説明させていただきます。
鼠径ヘルニアについて
鼠径ヘルニアとは、腹腔内の臓器(主に腸管や大網)が腹壁の薄くなった部分から飛び出してしまう疾患です。
日常生活での違和感や痛みを引き起こすだけでなく、放置すると重大な合併症を引き起こす可能性があるため、手術による治療が推奨されています。
現在は、メッシュと呼ばれる人工補強材料を用いた手術が標準治療として定着しており、多くの方が日帰り手術で治療を受けられるようになっています。
術後に便秘になりやすい理由
手術後に便秘が起こりやすい理由は、主に以下のような要因が関係しています。
まず、手術による腹部への侵襲により、一時的に腸の動きが鈍くなることがあります。
これは手術後の生理的な反応の一つです。
また、手術後の痛みや違和感により、体を動かすことを躊躇してしまい、その結果として腸の動きが低下することもあります。
さらに、手術後の食事量の減少や、水分摂取量の低下も便秘の原因となります。
術後の痛み止めとして使用するNSAIDsと呼ばれる薬も、腸の動きを抑制する作用があり、便秘を引き起こす一因となることがあります。
便秘対策の具体的な方法
術後の便秘を予防・改善するためには、以下のような対策が効果的です。
まず、適切な水分摂取が重要です。
術後は普段よりも意識的に水分を摂取するよう心がけましょう。
特に朝一番の水分摂取は、腸の動きを活発にする効果があります。
食事面では、食物繊維を十分に含む食材を意識的に取り入れることが大切です。
野菜、果物、全粒穀物などを積極的に摂取しましょう。
ただし、手術直後は消化の良い食事から始め、徐々に通常の食事に移行することをお勧めします。
また、可能な範囲での適度な運動も効果的です。
術後の回復状態に合わせて、短時間の散歩から始めて、徐々に運動量を増やしていくことをお勧めします。
ベッド上でできる軽い運動として、足首の上下運動や膝の曲げ伸ばしなども効果があります。
注意すべきポイント
便秘対策を行う上で、いくつか注意していただきたいポイントがあります。
まず、術後早期は強く力むことは避けるべきです。
無理な排便は手術部位に負担をかけ、合併症のリスクを高める可能性があります。
市販の下剤を安易に使用することも推奨できません。
特に刺激性の下剤は、腸の動きを必要以上に促進させ、かえって腹痛や不快感を引き起こす可能性があります。
下剤の使用が必要な場合は、必ず医師に相談の上、適切な種類と用量を選択してください。
また、食事の改善を急ぎすぎることも注意が必要です。
手術直後から急に食物繊維を多く摂取すると、かえって消化器症状を悪化させる可能性があります。
段階的な改善を心がけましょう。
まとめ
鼠径ヘルニア手術後の便秘は、適切な対策を行うことで予防・改善が可能です。
水分摂取、バランスの良い食事、適度な運動を心がけることが基本となります。
しかし、これらの対策を行っても改善が見られない場合や、強い腹痛、嘔吐などの症状が出現した場合は、速やかに担当医に相談してください。
当院では、患者さん一人一人の状態に合わせた術後のケアを提供しています。
便秘でお悩みの方は、遠慮なくご相談ください。皆様の快適な術後回復をサポートさせていただきます。